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自動車工場・自動車業界の産業用ロボット

自動車を組み立てたり関連製品を製造したりする自動車工場において、塗装ロボットや溶接ロボット、組立ロボットなど様々な産業用ロボットが導入されており、それぞれの機能や特徴を活かして自動車の生産が行われています。

巨大な機械部品である自動車の本体から、細かな内装パーツに至るまで、色々な部品を取り扱う自動車工場では産業用ロボットによる作業の自動化が進んでおり、現代の自動車業界を支える要ともいえるでしょう。

このページでは、自動車工場や自動車業界で活用されている産業用ロボットについてまとめました。

自動車工場のロボット活用シーン

自動車工場では大きく分けて5つの作業工程が存在しており、それぞれプレス工程、溶接工程、塗装工程、組立工程、そして検査工程となっています。そのため産業用ロボットも各工程に合わせて設置されています。

自動車工場の「プレス工程」で使われる産業用ロボット

プレス工程とは、文字通り材料となる金属板などに圧力をかけて任意の形状に整えたり加工したりして、自動車のフレームやドアといったパーツを製造する工程です。

プレス工程では大きく重たい金属板を使って作業しなければならず、人間の手作業で正確かつスムーズに行うことは困難です。そのため自動車工場ではプレス工程に産業用ロボットを導入し、巨大で高重量の金属板でもスムーズに加工して目的のパーツを製造しています。

また、システム化により歩留まり率を改善して材料のロスを抑えることで、全体のコスト削減を追求していけることもメリットです。

自動車工場の「溶接工程」で使われる産業用ロボット

溶接工程では、プレス工程で製造された各車体部品を溶接によって接続させ、自動車としての形状に一体化させます。溶接加工に不備があれば自動車の耐久性を損なってしまうため、正確な作業の継続が求められている一方、生産性を向上させるためには連続的にスムーズな作業が行われなければならず、どうしても人力による溶接作業では限界があります。

なお、自動車工場で使われる溶接ロボットにもアーク溶接やスポット溶接といった溶接方法の違いや、対応できるワークのサイズなどによって違いがあり、対応する工程ごとに適切な製品の導入を検討しなければなりません。

自動車工場の「塗装工程」で使われる産業用ロボット

溶接工程を経て自動車パーツとしての形状が整えられた後、対象となる製品は次に塗装工程へ進みます。

塗装工程は文字通り自動車本体へ対応する塗料を吹き付けて色を付ける工程であり、塗装前に油や汚れ、ホコリなどを除去した上で、丁寧な仕上がりが追求されなければなりません。

自動車業界において車両や各部位のカラーといった外観は非常に重要なアピールポイントであり、塗装工程の品質がそのまま売上や人気につながることも考えられます。

塗装ロボットは設定された条件に従って塗装を仕上げるため、常に均一な塗装品質を追求できる点が重要です。

自動車工場の「組立工程」で使われる産業用ロボット

自動車のボディへの塗装が完了すれば、いよいよ各パーツを組み立てて一台の車両として完成させていく組立工程に移ります。

組立工程ではエンジンのような自動車の走行性能に関わるパーツから、インテリアやエクステリアといったデザイン面に関わるパーツまで様々な部品が組み立てられるため、それぞれの部品の重量やサイズ、位置関係などに合わせて適切な組立ロボットを利用される必要があります。

なお、組立工程に不備があれば自動車の走行性能や安全性能が低下して人命に影響する可能性もあり、正確なティーチングや作業品質が求められることも重要です。

自動車工場の「検査工程」で使われる産業用ロボット

組立てられた自動車は、出荷の前に改めて検査工程で不具合や不良の有無を検証されます。

検査工程ではデジタルカメラや画像解析システムなどを使った外観チェックから、その他にも様々な検査機器や試験機器などを活用して検査が行われており、全ての項目において適合条件を満たしているものだけが出荷・納品されるという流れになります。

検査工程に問題があれば、最悪の場合、大量の自動車がリコール対象になって莫大な損失を発生させてしまう恐れもあり、検査ロボットを導入して正確性と作業の効率性を同時に追求していくことがポイントです。

自動車工場で産業用ロボットを導入するメリット

生産性の向上

自動車工場において、人の手作業だけでは困難な重量物を取り扱う製造工程や、人が直接加工することが難しい素材の利用といった、生産効率を低下させる状況は少なくありません。しかし産業用ロボットを導入することで個々の作業や工程をオートメーション化・システム化し、効率的に進めることで全体の生産性を高めていくことが可能となります。

また、産業用ロボットであれば24時間365日体制で稼働させることも可能であり、さらに生産力を強化していくことも期待できます。

人件費削減・人手不足の解消

自動車工場などで働くエンジニアを含めて、産業・工業分野では慢性的かつ深刻な労働力の不足が続いており、各企業や自動車工場にとっても人手不足の解消は早急に解決すべき課題です。また、生産力を高めるために人材の採用活動を活発化させて雇用条件を改良した結果、人件費が占める割合がコスト全体で高まってしまうことも考えられるでしょう。

産業用ロボットを導入するためには初期費用や維持費用がかかりますが、安定的に作業を維持できる上、人手不足の解消にもつながるため、人材マネジメントを見直して人件費の合理化やコストパフォーマンス向上を目指していくことも可能となります。

作業者の安全確保

自動車工場では溶接作業や塗装作業、重量物の加工・組立など、人体に悪影響を及ぼすリスクのある作業も日常的に行われており、常に作業員の健康面やメンタル面への配慮が欠かせません。一方、産業用ロボットは人体にとって危険とされる作業もシステム化して効率的に実行していくことが可能であり、経験や知識を備えた従業員を安全な環境に配置しつつ、リスクのある作業をロボットに担当させて合理化を図るといった取り組みを進めることができます。

品質の安定化

産業用ロボットを導入するメリットの1つが、常に均一の品質で製造ラインを稼働させられるという点です。

産業用ロボットは事前の条件設定(ティーチング作業)によって動作の内容や手順を決められ、その条件に従って作業を繰り返します。そのため事前のティーチングを適切にすれば製品や部品の品質についても安定性を高めることが可能となり、不具合品の発生リスクを軽減できることはメリットです。

自動車工場で産業用ロボットを導入するデメリット・注意点

導入費用やメンテナンス費用がかかる

産業用ロボットを導入する場合、当然ながらロボットシステムを購入して設置するための初期費用が導入費用としてかかります。また、ロボットシステムは導入して終わりでなく、その後も安定して稼働させられるように定期的なメンテナンスを行っていかなければなりません。そのため、維持費がランニングコストとして発生することも事実です。

技術者の育成・資格取得が必要

産業用ロボットは便利な機械やシステムである反面、あらかじめ設定された条件に従って作動するため、設定や操作法を誤れば重大な事故に発展しかねません。そのため産業用ロボットを取り扱うためには専門的な知識やノウハウが必要であり、担当者にも資格取得が義務づけられています。

産業用ロボットの導入には、同時に技術者の育成や資格取得の支援といったことも必要です。

事故防止のための対策が必要

製造ラインにおいて作業員や技術者と一緒に作業する産業用ロボットは「協働ロボット」と呼ばれ、周囲に他の作業員が行動していることを前提に設置条件を考慮しなければなりません。そのため安全柵の設置や十分なスペースの確保といった物理的な安全対策はもちろんとして、従業員にも協働ロボットの使用に関して適切な知識を学ばせておく必要があります。

自動車工場で産業用ロボットを導入した事例

自動車工場において産業用ロボットを導入した事例をご紹介します。それぞれの自動車工場でどのような課題を抱えており、産業用ロボットの導入でどう解決したのか、具体的にチェックして比較検討にご活用ください。

参照元:経済産業省 一般社団法人日本ロボット工業会「ロボット導入実証事業 事例紹介ハンドブック2018 ~先進的なロボットの活用方法を紹介します~」
https://robo-navi.com/webroot/document/2018RobotHandBook.pdf

ボディフレームの溶接作業の自動化と省コスト化が実現

車のボディに使われる金属フレームを製造しているA社では、かつて作業員2名の手による手作業での溶接作業が行われており、ボディフレームの左右をそれぞれ溶接する際にわざわざワークの向きを変えるといった工程が必要でした。

そこでボディフレームの溶接工程を自動化できる溶接ロボットを導入したところ、導入前は1日1台の生産効率が1.5倍に向上し、さらにフレームの回転作業に必要なスペースが削減されて作業環境の見直しにも貢献したそうです。またロボット1台を導入したことで溶接設備3基分の生産力が獲得され、設備コストが3分の1になったことも重要です。

組み立てロボットの導入で人的負担が8割減

自動車部品の製造や組立を行っているB社では、ハイブリッド車に使われる部品の組立工程に関してスカラロボットを導入しつつも、数多くのネジ締めが必要なことから、合計10人による人力の作業フローが不可欠となっていました。そこで、6軸多関節ロボットとリニアコンベアモジュールを組み合わせたオリジナル産業用システムを導入した結果、1シフト1名での作業が可能となり、製造ラインにおいて必要な人員の数が10名から2名に削減されたことは重要です。結果的に人件費も節約できて、導入コストはおよそ2.4年で回収可能ということでした。

移動できる協働ロボットが複数の作業を兼用

自動車部品の製造を行っているC社では、すでに製造した製品の検査工程にロボットシステムを導入していたものの、従来の方法では1つの工程に対して1つのロボットシステムが固定設置で作業を行っており、複数の作業を行うために目的ごとのロボット導入が各ポジションで必要になっていました。

そこで、移動可能な協働ロボットを再導入し、複数の部品や作業について一部を専用システム化しつつロボットによる作業を兼用とすることで、ロボットの運用にかかるコストを大幅に削減して少量多品種製造のコストパフォーマンスを高めています。

まとめ

自動車工場では作業員にとって危険であったり、肉体的・精神的に負担が大きかったりする作業も多く、ただでさえ慢性的な人材不足といった課題を抱えている自動車業界において離職率を高めてしまう原因になっていました。

産業用ロボットは作業員の負担やリスクを軽減しつつ、作業の効率化を促進して生産力向上や低コスト化、工期短縮といった様々なメリットを追求できます。ただし、産業用ロボットのコストパフォーマンスを追究するにはニーズにマッチした導入プランが重要になるため、まずは信頼できるロボットSIerへ相談することをおすすめします。

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