産業用ロボットの導入が進むにつれ、注目の集まるロボットSIer。その「SIer(エスアイアー)」は、システムインテグレーション(System integration)と呼ばれる、企業が抱える課題の分析やシステム構築、運用の一連の流れを行う事業者のことを指します。
そんなシステムインテグレータの中でも、ロボットに特化した事業者を「ロボットSIer」と呼んでいます。経済産業省のロボットSIerについての説明ページでは、ロボットSIerのことを「ロボットに命を吹き込む仕事。」と表現しています。
ロボットSIerは、ロボットを活用して工場の自動化を目指している企業が抱える課題の分析、システム構築、運用といった一連の流れと、様々な機器装置や部品、原材料などを把握し、企業にとって最適なロボットシステムの構築を提案、導入、稼働、稼働後のアフターメンテナンスを一貫して提供をしています。
このメディアでは、製造業向けのロボットSIer会社を特集しています。TOPページでは自社の環境に合わせて選べるオススメのロボットSIer会社を紹介していますので、ぜひチェックしてみてください。
「RIPS(Robotsystem Integration Process Standard)」とは、ロボットシステムをスムーズに構築するために、2017年に経済産業省と一般社団法人ロボット協会によって検討・提案されたロボットシステムインテグレーションプロセス基準のことです。
RIPSには、ロボットシステム構築時の作業工程やロボット導入に必要な作成書類などロボット導入の流れを、誰でも使いやすいようにまとめられ、ロボット導入の流れを知ることができます。
この「RIPS」のおかげで、ロボットSIerと依頼先との認識のずれから発生する作業を防ぐことができ、ロボット導入作業の進捗もわかりやすく、問題が発生した場合でも対応が迅速にできるなど、「RIPS」はロボットSIerにも製造ラインの自動化を推進する企業にとっても、メリットの大きいものとなっています。
ロボットシステム構築を進めて行く上でポイントとなるのは、従来ロボットへの置き換えが困難だった作業をロボットに置き換えていく技術です。
その中で課題となるのが、生産する製品の形状や素材などが原因でロボットの動作が複雑になること、ワークハンドリングがしにくい材料であること、人と共存するエリアでの安全対策を講じるスペースがないといった工場の環境などです。
これらの問題を解決しロボットシステムを構築を進めていくには、ロボットに関する知識はもちろん、周辺機器などについても十分知る必要があります。ロボットの型だけでも、直交型・垂直多関節型・水平多関節型・パラレルリンク型・双腕型など、複数の種類があり、それぞれに異なる特徴を持つため、すべてを理解するためには、膨大な時間と労力がかかります。加えて、周辺機器についての知識も必要となると、自社だけでロボットシステムの構築を完結させることは非常に難しいといえるでしょう。
ですので、ロボットシステムを構築する際には、ロボットシステム構築のプロ集団であるロボットSIerに相談してみてください。
ロボットSIerに頼まずとも、購入するロボットメーカーにお願いしたら、そのシステム構築まで対応してもらえるのでは?と思う方もいるでしょう。
しかし、ロボットメーカーはロボットの開発や導入に必要な工事作業を取り扱っていても、作業環境の全体的なシステム化や製造ラインの再構築までカバーしているとは限りません。
ロボットメーカーはロボット開発のプロであり、必ずしもシステム構築のプロとは限らない点が重要です。
ロボットSIerとしてクライアントのロボットシステム構築を支援してくれる企業には、大きくロボットメーカー系と独立系の2種類が存在しています。
ロボットメーカー系のロボットSIerとは、文字通りロボットメーカーが自社製品として産業用ロボットの開発・製造・販売を行いつつ、それらを活用したロボットシステムの構築まで一貫対応できるパターンです。
ロボットメーカー系のロボットSIerであれば導入目的となるロボットに最適な周辺機器や連携システムの構築までサポートしてもらえる可能性が高く、またロボットメーカーの規模によってはシステム全体を同一メーカー製品でそろえられる可能性もあります。そのため、メンテナンスの利便性やサポートサービスの合理化などのメリットを追求することも可能です。
独立系のロボットSIerとは、自社で産業用ロボットの製造や開発は行っていないものの、様々なロボットメーカーの製品を活用してロボットシステムの構築をサポートしている企業です。
色々なロボットメーカーの製品の中から目的にマッチしたロボットを選択し、それに合わせてシステムをカスタマイズしてくれることはメリットでしょう。
反面、メンテナンスが製品ごとに複雑化したり、システムの刷新を考えた際に適合性のあるロボットやパーツの選定が難しくなったりといったリスクもあります。特に導入後のサポートについて、ロボットSIerの一貫対応か個々のメーカー対応かもチェックしておく必要があります。
産業用ロボットの導入についてロボットSIerを活用するメリットをまとめました。
ものづくり業界に限らず、現在の日本国内においては深刻な少子高齢化や労働人口の不足により、人手不足が続いています。そのため、製造業の現場でも産業用ロボットを導入したり工程のシステム化・自動化を促進したりすることで、人手不足の問題を解消して効率的なパフォーマンスを安定的に実現することが目指されています。
一方、理想的な工程の効率化や現場の省人化を叶えようとすれば、それぞれの企業のニーズや必要とされる環境に適した産業用ロボットを導入することが欠かせません。
ロボットSIerを活用することで、クライアントが必要とする産業用ロボットの条件や機能について的確にアドバイスしてもらったり、適切な製品を紹介してもらったりといったメリットが期待できます。
産業用ロボットを適切に導入して作業工程の効率化が実現すれば、人件費を抑えられたり、作業時間を短縮できたりできるため、製造コストを削減することが可能です。そのため、産業用ロボットによって業務のコストパフォーマンス向上を目指したいというニーズは少なくありません。
一方、産業用ロボットを導入するためには高額なイニシャルコストが発生したり、安定した性能を維持するためのメンテナンス費などランニングコストが必要になったりすることも重要です。
産業用ロボットの導入で削減できる製造コストと、イニシャルコストやランニングコストのバランスを正確に検証することは、産業用ロボットや導入される業種・業界に関して専門的な知識を持っていなければ難しく、ロボットSIerなどのプロフェッショナルを活用する理由となります。
ロボットSIerを効果的に活用することで、製造目的に適した製品の製造ラインや作業環境を整えやすくなります。
結果としてニーズへ適切にマッチした産業用ロボットを導入することで、作業効率が向上するだけでなく、生産できる製品や部品の品質が安定することも重要です。
また、品質が安定することでリコールや代替品の製造、検査体制の厳重化といったリスクが抑えられるため、総合的なリスクやコストを抑えやすいこともメリットです。
産業用ロボットを導入しようと計画している企業にとって、自社ニーズや導入目的、現場の作業環境との相性などを正確に理解しているかどうかは重要なポイントとなります。
産業用ロボットの導入に関してあらかじめ専門家であるロボットSIerへ相談することで、自分たちでは気づいていなかったメリットやニーズ、導入後にどのような変化が生じるかといった将来的な見通しなどにアドバイスをもらえることは見逃せません。
産業用ロボットの導入に関して、ロボットSIerへ依頼する際の注意点や考え得るデメリットを解説しています。
ロボットSIerへ産業用ロボットの導入を依頼する理由の1つは、そもそもクライアント企業だけでは十分に適切な産業用ロボットや関連製品の選定や、自社の既存環境とのマッチングを叶えることが難しいというものです。
言い換えれば、自社のニーズや業界の特性をきちんと把握した上で産業用ロボットの適性を見極めてくれるロボットSIerでなければ、そもそも依頼するメリットがありません。
依頼候補となったロボットSIerがどのようなロボットを取り扱っているかだけでなく、これまでにロボット製品の導入をサポートしてきた業界や企業についても前もってチェックしておきましょう。
産業用ロボットを導入するに当たって、現在の自社の作業環境や設備機器、従業員の労働体制といった条件をまとめておくことは欠かせません。
もしも既存の機器や設備と、新しく導入する産業用ロボットとの相性が悪かったり、いっそ互換性に問題があったりすれば、導入コストが無駄になったり、あるいはさらに別の機器や周辺装置を導入しなければならなかったりといった問題が生じます。
そのため、ロボットSIerへ産業用ロボットなどの導入を相談する場合、必ず担当者へ自社の環境や状況を正しく理解してもらえるように求めることが大切です。
新しい産業用ロボットを導入しても、その使い方を正しく理解した上でマネジメントしなければ理想的な導入効果は得られません。
基本的に、産業用ロボットを導入しても使い方が複雑であったり、一部の人間しか扱えなかったりすれば、工程の効率化や人材マネジメントの適正化、属人性の解消といったメリットを叶えることは不可能です。あるいは、技術習得を叶えるために余計なコストや時間が必要となるでしょう。
現在の業務フローや従業員の技術レベル、作業の効率化に求められる機器の性能といった諸条件をロボットSIerへ多角的に検証してもらい、無駄なく使える産業用ロボットの導入をサポートしてもらってください。
産業用ロボットの基礎知識・用語
使いやすく、安全機能も搭載した協働ロボット一体型システムを提案。作業スペースの位置を自動で補正し、単純作業だけをロボットに任せて作業効率を最大化。
ロボットシステムとAIシステムのどちらのシステムも構築している日本唯一(2024年6月調査時点)の企業。産業ロボットとAI技術を組み合わせて工場全体の自動化と可視化を提案。